「Boy Meets Girl 」 関美彦

「Boy Meets Girl 」 関美彦

ラジオでは荻上チキがしゃべっている。秋の風が冷たい。とりたててやることのない僕はねっころがり聞いている。音楽の話にはつかれている。
小説を書くって何を書こう。ボーイミーツガールについて妄想か現実かどちらでも書ける。ボーイミーツガールって何かな、小説の中の美少女が現実の美少女。

彼女と僕がホテルにいったのは夏の終わりたぶん新大久保。なんで新大久保なのかは忘れてしまった。どこで待ち合わせをしたんだろう。背はちっちゃいけれどモデルのバイトをしていた。脚が細くてショートカット。美術系の大学を出たばかりだけど高校生の着る制服を普段着として着ていた。そんな女の子だった。

「そんな事してもらったら困るんです。一緒に音楽やってるだけなんで、触ってくるとか」
「ごめん、もうしないよ」
「するでしょ」
「しないからさあ」
昼のファミリーレストラン。彼女の家のそば、環七沿い。

僕と彼女は音楽をやっていた。バンドみたいな。知りあった時に僕はちょっと有名な音楽雑誌のライターをやっていた。彼女はそれで僕に興味を持ったみたいだった。僕は音楽をやっていたので彼女を誘ったのだ
「もうしないから。それにね君が座って僕をみた時に下着が見えてたんだ、だからさあ」
「パンティ見てたの」
「ごめん」
僕らは仲が良いのか悪いのかわからなかった。でも僕らはあいつづけた。
「あの椅子あるでしょ。あそこでボーイフレンドとやったんだよ。すごいでしょ」
「え、そうなんだ」

僕らの会話には脈絡がなく、彼女の部屋の椅子は昼間の強い日差しの中でただクリーム色に光っていた。

僕らはそんな午後をよくすごしていた。彼女の部屋で。彼女が友達の女の子と暮らしていたマンションで。

「エイフェックスツインいいよね」
ちっさいポータブルプレイヤーで僕らは聴いた。
「いいね」
彼女は12月生まれだったのでこれはたぶん冬の会話だ。
夕方には彼女の友達がバイトから帰ってくるのでそれまでレコードを聴いた。
「こんばんは」
「こんばんは、来てたんですね」
「ケーキ買いにいこう」
「行こう!」
「バタークリーム好きなんだ」
僕らは三人で駅前の不二家にケーキを買いにいった。紅茶を入れて三人で食べた。

下北沢までは歩いて近かった。ファーストキッチンで僕らは向かい合わせでしゃべっていた
「あのさあしてほしいことあるんだけど」
「なんですか」
「指をなめてほしいんだよ」
「指なめるの」
「うん。こないだクラブでショートケーキ食べたんだけど指についたクリームなめてくれた女の子がいたんだよ。すごい良かったから君にもやってほしいんだよ」
「…サンデー買ってくれるんならいいよ」

僕はカウンターでチョコレートサンデーを買ってきた。生クリームの中に指を入れて彼女の顔の前にさしだした。あっさりと彼女は僕の指を口に入れた。

何日かして僕らはホテルにいった。
「ホテルに行って遊ぼ」
「え、」
「りぼんとかいろいろおもちゃ持って行くと楽しいよ」
「うん、行きたいけど」
「だけど私にさわっちゃだめだよ、さわったらすぐ帰るからね」
「さわりたい」
「さわったら怒る」
彼女はちょっとすごんだ。下北沢で僕らはよく会っていた。だから新宿で待ち合わせたのかもしれない。ちょっと思い出してきた。冬だ。彼女はよくダッフルコートを着ていた。電車の中で彼女のダッフルのボタン(ていうのかあれは)を外した事を覚えている
「そんなことするんだ」
小さな声で彼女が言ったことを覚えている。
「どこにしようか」 彼女は明るく言った。
「どこでもいいけど」
新宿から大久保の町を歩いていったが結構混んでいて、選ぶという程の事はできなかった。
「7000円だせばお泊まりできるんだよ」

お金はぎりぎりだったけど古いホテルに入った。都築響一の本に出てくるような部屋。
部屋に入って彼女はシャワーを浴びた。彼女はベッドに座った
「やせてるように見えるけど、脱ぐとちょうどいいでしょ」
「すごいです」
「すごいでしょ」
ブラジャーとパンティは着けたままだった気がする。
「さわりたい」
「どこ」
「太もも」
「いいよ。少しだけ」

太ももをさわるとひんやりと冷たかった。脚に顔を近づけた。
「一番やなタイプの男」
怒られたけどさわって見つめ続けた。膝からの彼女を。

彼女の PHS が鳴った。ボーイフレンドからの電話だった。あの電話がなければと今思う。30分ぐらい下着を着けたまま彼女はしゃべっていた。
「何しようか」
「うん、」
「マニキュア持ってきたから足に塗って」
「ぬる」
僕が彼女の膝の大きさを覚えているのはこの為だ。小さな蜜柑ぐらいの膝小僧。
「やっぱり下手。何やってんの。やめなさい」
「ごめんなさい」

僕らはベッドで寝た。何もなかったのだ。

朝になり渋谷まで歩いた。電車賃もたぶんなかった。働いていたレコードショップで金を借りようとしたが断られた。当たり前だ。やらなかったけど僕らはその朝はとても気分が良かった。彼女とは友達になった。

朝の明治通からファイアー通り、朝ごはんさえ食べてなかった。
「じゃあね」
「またね」

何年かして彼女から電話があった
「君と似ている人と結婚したんだよ」
「変態かい」
「君ととてもよく似てる人、あと子どもも」
「一番僕の好きなゴージャスな女の子だった」
「さようなら」
「またね」

まだ女の子も音楽も時間もフリーだった。それは今だから感じる。
ラジオからはっぴいえんどの「風来坊」が流れる。

僕は眠りにおちる。その後の僕の人生は何かの刑罰を受けているかのようだ。いろいろあって友達は敵と味方に別れた。美少女を巡る旅は一旦終わりを告げた。

彼女は僕と似ている人と結婚したと言った。彼女ともし僕が結婚して彼女に似ている子どもができたら僕はまた違った種類の間違いを犯していたかもしれない。

「パパって呼んでほしいんだよね」
「頭おかしいね」
「うん」
「親子だったらおかしいよ」

高田馬場の小さな部屋であった女の子は元気だろうか。僕の音楽を彼女は一度でも聴いてくれただろうか。

僕が新大久保のホテルであのこの白い太ももを見つめていた時に戻れれば幸せと快楽は永遠になったのだろうか。

あの後僕は泥水を飲んだ。物を盗んだ。だから僕は一度死んだ。

下北沢で早朝彼女と歩いていた。花屋があり、そこにある植木ばちを僕らは彼女の部屋へ持ちかえった。

「花泥棒は罪にならないんだよ」
彼女は言った。僕はずっとその罪を償ってきたのだろう。

僕と過ちを犯してくれる美少女をたぶん僕は求めているのだ。

そしてこれから僕のストーリーが始まる。

これは僕の願望

夕暮れの渋谷駅、工場中の駅。歩道橋へ渡るたもとの辺り彼女は立っている。
「あれ、今日は」
「どっかで見たことあるよね」
彼女は制服を着ている。
「握手会いった事あるよ」
「あ、そうか」
「きょうレッスンなんだ」
「携帯止まってるでしょ、ツイッター止まってるよ」
「うーん」
「お金あげるよ、ごはん食べてる」
「何言ってるの」
「お金あげるよ」
「頭おかしいね、ライブこないで、声だすよ」

僕は財布から3万円を出して彼女にさしだした。彼女の手のひらに握らせた。
彼女はそれを受け取った。

「どっか行こう」
何もしゃべらないまま彼女は僕をみた。

明治通りを僕らは歩いた。普通の街の女子高生たちが僕らをみて何か話している。どうみても僕らは不釣り合いなのだ。親子でもなければもちろん友達でも恋人にも見えない。

「スニーカーほしい」
「いいよ、買ってあげる」
竹下通りの出口の近くのABC マートに入った。コンバースを買った。
スニーカーは一足しか持っていないのだという。
「おなかすいた」
「マック行こうか」
「いいよ」

ミルクとナゲットとフィレオフィッシュ
「エッチなことしたい」
「あんたとやるの、歯みがいてよ」
「歯ブラシ買うからさ」
「どうでもいいよ」
「高いよ、」
「二万」
わかったと彼女は言う。マックの椅子に片足をあげる。彼女は僕にバンツを見せる。

僕らは何も話さず渋谷まで歩いた。国立競技場の横を抜けた。

カラオケに行った
彼女はアニソンを唄い、僕はバカラックを唄った。彼女のほうが点数が高い。
彼女の太ももを僕は舐める。舌をいれても何も彼女は言わなかった。
「もっとしたいからホテル行こう」
「あと二万」
「そんなないよ」
「何したい」
「フェラ」
「ここで」

そんなに気持ち良くはなかったが、優しかった。腕を組んで僕は少し泣いた。
「さようなら」
「またね」
「誰かにいったら殺すよ、ツイッターとかへんなリプやめてよ」
「わかったよ」

僕は彼女と別れて家に帰る。公園通りのしたを抜けてタワーの前を通って駅の反対側、新しくできた地下の駅へ。

半袖のシャツが寒い。街を歩く女の子たちはぎりぎり夏服だ。みんなきれいな脚を見せている。

翌日また彼女とあった。僕の部屋に彼女はやって来た。

僕は彼女のDVDを見ている。僕は彼女の事を小学生のころから知っている。小学校高学年のころからDVDを出していた。彼女はアイドルになった。秋葉原や渋谷、会議室みたいなイベントスペースやライブハウスに出ている。5人のまん中の女の子。

横浜から一駅離れた僕のマンションに彼女はやって来た。国道の横を入り少し歩くと古い神社があり公園がある白いマンション。昼は小さなエレベーターで誰かと一緒になる事もなかった。ただ僕より年老いた男がJK と手をつないでいるのは見たことがある。どこにでもあるマンション。窓からはとなりのビルと電線が見える。夕方になると部屋のサッシに僕の姿が見える。青いアイゾッドを着ている。そしてもうひとり写りこむ。白いシャツとパンティだけの女の子。紺色のソックスははいたまま。

「写真撮らして」
「ギャラは」
「あげる」
「いいよ、金ないよね」

彼女はDVD の中から出てきた。信じられないような甘える眼差しで僕を見ている。

「学校は行かないの」
「行ってない」
「バイトは」
「コンビニ」

彼女のスマホが鳴る。セックスしようってLINE コンビニの店長からだ。片手で返す彼女。

「僕もやりたい」
「本音言ったね」
「だってさあ」

彼女は目をつぶる。僕の手を握る。じっとりと汗をかいた手のひら。爪をきっていてよかった。太ももに手を伸ばしてなでた。

ママとその彼氏と三人暮らし。彼女は僕の部屋に来るようになった。

彼女のいない部屋で音楽を聴く。ラジオのアナウンサーが言う「次の曲はボブ・ディランのレイレディレイ。真夜中のカーボーイの主題歌としてつくられましたが締切に間に合わなかったんです」カットアウト。彼女からのDMがきた。

ふたりで観覧車に乗った。夕焼けから夜に変わる時間。僕はカメラで彼女の写真を撮った。
「チューしよう」
彼女のくちびるに軽くふれる。僕の脚に自分の脚を重ねる。ちゃんとキスするのは何年ぶりだろう。
「きょうはうち、デートのつもりだったよ」
帰りに彼女からインスタントくじとをせがまれたので買ってあげた。薄手の花柄のワンピースを着ている。

平日のみなとみらい。僕は歩いて家に帰った。

次の日僕はデモに行った。彼女はライブ。赤坂の駅で降りて地上に上がった。日枝神社に向かう途中散々まよって台湾ラーメンを食べた。
日枝神社のエスカレーターを登った。左側に灰皿がある。タバコを吸った。階段を降り国会の裏に出た。かわいい女の子もいたがメインのスピーカーの人が面白かった。

遠くに押し流されて桜田門から帰った。日枝神社の中にお茶屋さんがあったころに好きだった女の子を思い出す。病気で死んでしまった唄姫を思い出す。沖縄の海に散骨したと聞いた。そんなに海が好きだったの、知らなかった。

家に帰ろう。家の近くのガストで待ち合わせているのだ。

「ハンバーグ」
「箸使いなよ、何きどってんの」
「ライブは」
「最悪でもない…ゴディバのチョコもらった」
「たべたい」
「うちのだよ」

タバコを吸う。ハンバーグにチキン、僕の分も食べる。育ちざかりだもんな、ママにLINE をしながら僕を見る。
「楽器弾いてる男の手見てると濡れるんだ」
「え、濡れるの」
楽器を弾く手つきをする
「うちのこと濡らせる気。笑う」

彼女のスカートの中を覗く。短いスパッツみたいの履いている。最悪だよ。

「疲れた、シャワーはいる」
「一緒に入る」
「いいよ」
「なんか楽しいね」
「楽しい」

ラジオを聴く。爆笑問題がしゃべっている。僕と同い年のふたりだ。僕を田中に似ていると言って彼女は笑う。栗毛色のショートカットが僕の股間で動く。男のこみたいに細い。キスはなくフェラだけ。

僕らはふたり並んでベッドで寝た。

勝手にパンをトーストにして彼女は部屋を出ていった。コンビニのシフトがきょうは長い。僕は彼女のDVD を見る。
ひとりでコーヒーを入れる。ネスカフェしか飲まない。ミルクを入れようとしたが冷蔵庫にはすでになく彼女が飲んでしまっていた。 
財布をみたが3万円なくなっていた。
小銭を持ってコンビニに牛乳を買いに行く。短パンでは国道を渡ってくる海風は冷たくライターの火もつかない。図書館にでも行くしかなかった。

部屋に戻り長袖のストライプのシャツに着替えて電車に乗った。ATM で5000円をおろした。きょう1日の生活費としては充分すぎる。ガストでランチを食べる。

「ママが病気でお金かりた、ごめんなさい。ちゃんとやろうね今度は」
彼女からDMが来ていた。

図書館でフランス文学の棚をみた。星の王子様のとなりにサドの本がある。何から何まで不思議な町だ。図書館にはたまにかわいいこがいる。地下に行って戦争の時代のこの町の写真を見る。病院に軍人に女学生。きっとあの女学生はみんなのアイドルだったろう。笑顔がまぶしい。

明日からは旅に出る。演奏旅行。彼女も一緒だ。

ビジネスホテルをツインに替えてもらう。バスはキャンセルして列車に行くと主催者に伝えた。

「ママ病気は大丈夫なの」
「血が薄くてよく倒れる」
「大丈夫じゃないじゃん」
「彼氏さんがいるからいいよ」
「おみやげ買おうね」

北の町へ向かう。彼女は脚をとじない。からだを僕にすりよせる。

「お腹へった」
「弁当買う」
「お菓子でいい」

チョコパイを食べると機嫌が良くなる。

「きのうコンビニの店長とやったら疲れたよ」
病院じゃないじゃん…

「チュー」
「いいよ」

平日の昼間の列車は僕らだけしか乗っていない。2階建ての列車。お互いに写真を撮った。僕のほうが声がでかい。彼女の腰の上にスタジャンをかけて触る。

二時間なんてあっという間だ。仙台についた。大きな階段を降りて、アーケードに入りラーメンを食べた。僕はひとりでライブハウスへ行った。

ライブハウスでは白いテレキャスターを持った女の子が唄っている。CとFをくりかえす。ヴェルヴェットアンダーグラウンドのサンデーモーニングのようだ。エレキギターが大きく見える。

リハーサルがおわり彼女がやって来た。コートにホットパンツ。彼女がでる見たいだ。

ライブは終わりギャラを受け取りふたりでライブハウスを出る。国分町を歩く

「完全に客に見えるね」
「なじんでるよ」
「コーヒーのもうよ」
「うちコーヒー飲めないの」

定禅寺通りのホテルへふたりで歩く。夜の風は強く木は大きくかしいでいる。

「ロリコンだよね、うちなんかもう年でしょ」
「妹いないの」
「胸とかないほうがいいでしょ」
「うん興味ない」
「うち胸ないよ」
「こどもみたいのがいい」
「それよりはあるよ」
「わたしのDVD 持ってるでしょ」
「変態かな」
「ううん、天使だよ、ロリコン天使」
「やりたい」
「ほんとにやりたいの、いいよいつでもやらせてあげる。やり方わかるの、なめていいよ」

僕らはホテルへついた。ロビーには黒いビニールレザーをはったソファ。観葉植物と新聞のラック。木目のカウンターでキーをもらう。

ひとつしかないエレベーターで五階へ上がる。ふたりでシャワーを浴びた。

僕らは初めてセックスをした。
やり方は彼女がすべて教えてくれた。

朝になりテレビをつける。地元の中古車屋のコマーシャル。名取か僕がボランティアで行ったところだ。

彼女も起きた。僕らは横浜へ帰る。

「ママと結婚しようかな」
「馬鹿でしょ」
「親子…」
「最低だよね」
ママへおみやげを彼女は買った。新幹線の中で僕らはただ寝ている。

仙台のタワーレコードでもらったバウンスを僕は読んでいる。缶コーヒーを飲みながら。アイドルがいっぱい載っている。僕も昔は載っていたのだが。今は横に寝ているアイドルに夢中だ。

列車は東京駅に着いた。彼女はこのまま秋葉原のライブハウスへ向かう。

「ブログ見た、ママと仙台行ったんだね」
「男と旅行なんて事かけないじゃん」
「まあね」

コメント欄を読むと、行ってらっしゃいとか、寒いけど気を付けてとか。ほんとにママとか…僕は彼女からおみやげを預かる。東京から秋葉原は二駅、僕は新横浜へまた新幹線に乗る。

「行ってらっしゃい」
「じゃあね」

結婚しようかなと思う。17歳の花嫁。彼女の事務所との契約が切れたら。なんとかなる。

横浜に戻って彼女のママにあう。

「娘から聞いてます」
「僕おかしいんですよ」
「優しい人だって」
「お母さんきれいです」

僕の普段の仕事が終わった西口の喫茶店、カフェではなく喫茶店。

「プロのミュージシャンされてるんでしょ」
「いつもは派遣社員です」
「あのこは前からあなたみたいな年上の人とお付き合いがあって」

「金ですか」
ママは黙る
ウェス・モンゴメリーが流れる店の中。たぶんカリフォルニアドリーミング

「あなた調べたけどだいぶお金借りてるでしょ」
「はい」
「あのこはたいへん」
「知ってます」
「ほかのこもいるでしょ」
「いや」
「あのこを大事にしてね」

伝票はママが持って行った。

これはフィクションだ。

僕はきょうもアイドルを見に原宿へ行く。僕が知っている店はもうほとんどない。竹下通りを出たところの増田屋も黒い油で天ぷらを揚げてくれた天ぷら屋もない。子供の頃から遊びに行ったビクターもなく大学生の時にバイトしていたウェンディーズもない。同潤会のアパートで森本美由紀さんの個展を見たあの頃を思う。横断歩道を渡るとブルックスブラザーズの並びにカワイ楽器のあったあの頃の表参道。

僕は竹下通りを歩く。皆きれいな脚を出している。

新しく始まったアイドルのショーを見る。
終わって原宿図書館で本を読んだ。

「プール行こう」
「もう寒いよ」
「室内プール」
「小学生好きだよね」
「ふつうにおねえさんもいるよ!」
「水着買ってくれるんならいいよ」

僕らは大きな階段を登りプールへ行く。ちっさいビキニ。市民プールには合わないな。ふたりで泳ぐ。50メートルプールを横に泳ぐ。水の中で彼女の脚が水色に揺れる。脚をつかむ!彼女はむくれて振り返る。僕は彼女の水着の中に手をいれる。一瞬チューをする。

「誰も見てないよ」
「みんなうちら見てるよ」
「ダイジョウブ」
「ダイジョウブじゃないよ」

僕らはプールを出た。寒かった。彼女は今からレッスン。地下鉄を乗り継ぎ東京へ向かうのだ。

僕らの話はかみあわない。ラジオからはブルーハーツが流れている。彼女の小さな胸が大好きだ。彼女は制服のりぼんを部屋において行った。

「ドラムやりたい」
「教えてあげる」

「椅子に座って」
「うん」

彼女は僕の部屋のドラムの丸イスに座る。

「まっすぐ座らなきゃだめだよ」
「脚つるよ」
「そのままペダルにまっすぐ力が伝わるようにね」
「ドラムたたけるかなあ」
「うん。スタジオ行こうね」

制服のミニスカートを履いている。白い脚。

「好きだよ」
「うちも」
「チューする…」
「うん」

彼女の好きなギャルバンのライブに行く約束をした。

僕がかつて出ていたライブハウスには今アイドルが出ている。渋谷の線路沿いリハーサルスタジオの下のライブハウスはいっぱいだ。
僕と同年代の男と彼女らに年代の近い女の子たち。物販には並ばずライブハウスを出た。

「バンドやりたいな」
「たいへんだよ~メンバー集めなきゃ」
「やる」

楽器屋でスティックを買った。彼女はレッスンに向かった。一緒に恵比須まで歩く。

彼女はグレイのパーカーにジーンズ。僕の買ったコンバース。白いマスク。だいぶ寒くなってきたのだ。夕焼けの恵比須から僕はバスに乗る。バスは五叉路を抜けて小学校の前をとおり元渋谷公会堂の前に着く。公園通りの途中を右に曲がり本屋に入り渋谷直角の本を買う。

恵比須の街で僕は89年のピチカートファイプを思い出す。この街にはビール工場がありそのなかにライブハウスがあったのだ。ファクトリーという名前だった。確か駅から坂を登って行った事を覚えている。12月だった。年末かクリスマスか忘れてしまったけれど。軽食としてサンドイッチが出た。友達と行った。僕にも友達がいたのだ。

横浜に帰りCD ショップに行ったがピチカートファイプのCDの棚は空だった。

ショートカットの頭を抱きしめる。シャンプーの匂いがする彼女はピチカートが解散した年に彼女はいくつだったのだろう。

「やりたい…さびしそうだよ」
「やる」
「やらないくせに」
「店長とやってきた」
「うそだね」
「店長舐めるよ、うまいんだ。練習しようか」
「うん」
「もう、うちがいるからリフレとかいっちゃだめだよ」
「おやすみのチュー」
「いいよ」
「テスト近いから勉強するね」

僕の机で彼女はノートを広げている。僕は目を閉じて過去へ遡る。

夜中を過ぎて彼女は僕のベッドにもぐり込んでくる。すぺすべのおしりを触る。腰を押し付けると彼女は僕の乳首をなめた。僕は気が遠くなった

「ここ弱いね」彼女は笑った。

昔女の子と映画を見に行った。ブエナビスタソシアルクラブ。映画に出ている有名な歌手のCDの解説を書くため。もちろん映画は見ずにミニスカートをはいた彼女をさわりまくった。周りは気づいて迷惑そうな顔をしていた。彼女は少し声をあげていた。突然彼女は出ていき僕は彼女の後を追った。

記憶は突然そこで終わる。今年なくなる渋谷の映画館での話だ。

今僕は17の女の子に恋をしている。
彼女はツイッターをうっている
「おやすみなさい」

ツイッターでハース・マルティネスが死んだ事を知る。僕が渋谷のレコードショップで働いていた頃良くレコードを聴いていた。

朝、レコードショップにつくと僕はブラインドを上げて窓も開けてなにかレコードをかけた。メリサ・マンチェスターとかスティービー・ワンダー。ハースは2時ぐらいに聴く、そして夕暮れにはローラ・ニーロだ。買ってきたビッグマックとコーラ。

「ママに会おうかな」
「やめときな」
「こないだあったんだ」
「知ってるよ、うちに秘密であったんだよね、好きなんでしょ」
「そうだよ、結婚しようと思ってさ」
「最悪」
「うそだよ」
「ウソつき」

僕らは川沿いを歩く。晴れた空。大きな川。ベージュのセーターにスカート。彼女の家の近く、誰かに見つかったらやばい、でも最近ふたりは気にも止めない。

僕は自分がつくった唄を口ずさむ
…ガソリンがなくなっても…

彼女は自転車を押している。
「スタバ行こうか、コーヒー飲みたい」
「パパずっと働いてなかったんだ。だから働いてる人好き」
「働いてるさ」
「うん、知ってる」
「アイドル上手く行くといいね」

風に揺られて彼女は笑って僕にチューをする。
彼女の家の前で別れた。

リリースイベントが始まって彼女は忙しい。僕は遠くから彼女を見ている。秋葉原、新宿、渋谷。まるでツアーみたいだ。僕はやることがなくなるとこの「小説」を書いている。デニーズでアイスコーヒーを飲みながら。彼女のママは僕の10こ年下。
きょうは電池がなくなりそうなのでここまで。おやすみなさい。彼女のママとやった。

彼女の家、2階建てのコーポ

「あのことやってるでしょ」
「僕、彼女と結婚します。子供できるかもしれない」
「パパになってくれるの」
「ママともしたい、だけど若いほうがいいんで彼女と結婚したい」

シャワーを借りた。歯ブラシをかりて歯を磨いた。歯茎から血が出た。シャワーからあがるとブリーフをはいた。ブリーフの上からチューをしてくれた。僕は家へ帰った。彼女が家に帰る前に。

僕は海老名からみなとみらいへ。二人で乗った観覧車を見上げる。夜になるのがだいぶ早くなった。エロビデオを借りようとレンタルビデオ店に行った。スターバックスを横目に見て外にでると右に曲がった。横幅が30メートルはある大きな舗道。新しいオフィスビル。夜のブルーのなかに赤い大きな自動車のロゴ。あそこまで歩けば横浜の駅につく。

僕のマンションにつくと彼女が待っている。スーツケースを横に置いて。制服を着ている。

「お帰りなさい」
「ただいま」
「おそくない?」
「エロビデオ」
「借りたの!」
「かりた」
「大人の裸でも興奮するんだね」
「わりと普通だよ」
「寒いから部屋」

夕ごはんに冷凍ピラフをつくった。カラオケボックスのピラフと同じみたいな味がする。

「子供できたらどうする」
「できない。ピルのんでる。マネージャーさんからもらってる」
「よかった」

ソファーに寄りかかる

「結婚しようか」
「変態、リズリサのワンピース買って」
「いいよ。ママってさあ、昔アイドルだったよね」
「知ってるの」
「好きだった。原宿のライブハウスで見た」
「知ってたんだね」
「ママには言ってない」
「殺されるよ」
「おやすみ」
「大好き」

僕は次の日仕事だった。
仕事の帰り後ろから棒で殴られた。暗闇でやられた。誰かに僕は恨まれているのだろうか。いつかテキーラを飲んで気を失った時以来、僕は倒れた。駐車場で僕は目覚める。髪の毛が赤く固まっている。家まで歩く。シャワーを浴びて寝込んだ。目覚めたのは夜だった。

彼女のママは大きなステージで踊っていた。僕が昔やっていたバンドと同じライブハウスに彼女は出ていた。僕は竹下通りのライブハウスを思い出す。
新しくきれいな階段があった。僕は髪の毛を伸ばしてベースを弾いていた。彼女のママは銀ラメのミニスカートをはいていた。

頭が痛い。膿が出ている、吐き気もした病院に行こう。

一週間。
彼女からメールもDM も来ない。気になってツイッターを見るとアカウントが消えている。家の回りに黒いスーツの男を見かけるようになった。彼女の名前で検索をした。運営のブログを見る。大切なお知らせ。彼女はアイドルを辞めていた。心ないファンのストーカー行為のため芸能界を卒業し学業に専念します。彼女のコメントでもなく簡単なお知らせ。gmail を開けると知らないアドレスからメールが来ている。メッセージはただ「彼女に近づくな」とあった。

ピチカートファイブのさ・え・らジャポンを聴く、12月24日を聴く。彼女のDVD を見ながら。友達が亡くなったと悲しい知らせが届く。僕は目を閉じた。冬はもうすぐそこまで来ている。ラジオを聴いて眠ろう。

朝目覚めるとツイッターで知らないアカウントからフォローされている。フォローバックする。たまごのアイコン。何もつぶやいていない。
僕は仕事にでる。
仕事が終わると女友達からメールがきた。あそびにこいという。京浜東北線に乗り都心の彼女の家へ行く。フェラはだめでもハグぐらいしてくれるだろう。

「アイドルと付き合ってたんだけど、いなくなった」
「誰にも言っちゃだめだよ、誰なのちなみに」

友達はライターをしている。業界に詳しい。
「私もやってたよ、いろいろ」
「何それ」
「やったよ」
「そうか」
「風呂入って」
「眠い」
「ねるねるサギ」

彼女はイックバルのCD をかける。僕らは音楽の力を借りて抱き合った。スイートソウルの様な音楽。見つめあった。悪くないイックバルは悪くない音楽だった。

ふたりでツタヤまで歩いた。スタバでコーヒーを買って飲む。南の島へ行きたいのだという。連れてってと言われたが僕には南の島の海のブルーが眩しすぎる。旅の本をふたりで眺めている。

翌朝僕は青山にある事務所に行った。青山通りは風が強く、青空がどこまでも高い。思ったより小さなビル。一階のインターフォンで喋る。

「こんにちは」
「いらっしゃい、ごようは」
「彼女の件です」
インターフォン越しの女性が黙る。
「どうぞ」女の声が言った。

僕はエレベーターに乗った。廊下は外に面している。つきあたりのドアのブザーを押した。
部屋に入る。フォトショップで作ったポスター。僕の知らないアイドル、シンガーソングライター。
「音楽やってらっしゃるんですよね、いいなあうちのアーティストにも楽曲提供して下さいよ」
「彼女の件でお話しを」
「話しなんかないです」
「僕らは愛しあってます」
「下らない、商売なんだよこっちは」

彼はキャビネットから契約書を持ってくる。なにかを説明しようとしている。

シャツを外にだした、サングラスを頭にかけた男が僕の前でしゃべっている。もともとはこの青山通りにあったレコード会社の社員。

「みんなお前には迷惑してるんだよ」
「僕もあなた知ってますよアーティストの奥さんとできてた」
「しゃべれなくしてやるか」
彼は僕の腕をつかんだ。
「やめて下さい、とにかく邪魔は止めて下さい」

僕らはだまった。窓の外には外苑の並木が見える。彼の携帯が鳴った。席を立ちうしろを向いた。僕は立ち上がり事務所を飛び出た。デスクの女の子がこちらを見ている。エレベーターは使わず非常階段を使った。地下鉄の駅まで走った。

メトロを神宮前で乗り継ぎ小田急線で彼女の家まで行った。ベルをならし窓をうかがったが誰もいない。僕はタバコを吸った。携帯が鳴った。DM が来ている。あのたまごのアカウントからだ。周囲を見回すと誰もいない。僕は人のいる駅まで走った。夕方の街の人混みを抜け駅についた。横浜行きの相鉄に乗りツイッターを開いた。

「友達の家にいる。きて、会いたいよ…」

僕はDM を返した。
「すぐいく、待ってて」
駅の名前だけ送られてきた。家には帰れないなあとぼんやり思った。彼女のいった駅についた。駅前にゴロゴロのついたスーツケースをもった彼女がいる。僕らは再び出会い直した。僕の買ったリズリサを着ている。一緒に行った109は違和感だらけで結構つらかったを思い出す。アイドル現場で会う女の子達は僕を仲間のように接してくれたが109では単なる部外者いや望まれざる訪問者だった。まるく切り取られた襟足から見える肌がまぶしい。足元はコンバース。

「元気か」
「元気じゃないよ」
「泣いたか」
「泣いたよ」
「社長か」
「ママと社長だよ、遠くに行ってた。言えないぐらい遠く暑かった」
目の下にクマができている。

「ごはん食べてる」
「さっきマック行った」

僕らお互いに正面から見つめあった。大きな瞳から涙が流れている。女友達に連絡した。きょうは泊めてくれる。僕らは初めて人前で手を繋いだ。チューはしなかった。僕らは都心の友達の部屋に向かった。首都高のある街。コンビニでドーナツ。彼女は熱いお茶、僕はコーヒーを買った。フレンチクルーラーの甘さがうれしい。

友達は彼女を風呂に入れてくれた。夕飯は豆腐ハンバーグとフレンチフライ。僕らはだまって食べた。

「調べたけどあなたなんであんな事務所入ったの」
「ママの知り合い」
「ママと社長できてるよね。誰に聞かなくてもわかるよ。親は選べないけど、運営は選べる。元気出して」
「これからどうしよう」
僕はただ聞いている
「それとあなた嘘ついてるよね、古参オタに聞いた」
「嘘ついてないよ」
「あるよねサバよんでるでしょ」
「あのさあ」
「JK じゃないよね」

「ばれたか、」
「信じてるのこの横にいるおっさんだけだよ」
「わかるよね」

そうなのか。まあ年ごまかされるのは色んな店で慣れている。

「いくつ」
「20才…」

ねえ結婚しよう。僕は彼女の顔をみた。彼女も僕を見ている。僕らはうなづいた。窓を開けた。風が冷たく吹き抜けた。
「お祝いだよビールのもっか」
3人で朝までビールを飲んだ。目玉やきを作った僕にはそれしかできないのだ。塩とこしょう、仕上げに水を入れた。

グレーのパーカーとブルージーンズ、僕は紺のパーカー。朝の電車に飛び乗り横浜に戻った。10時の電車は空いている。結婚するにはどうしていいかわからなかったが区役所に行った。

「保証人がいるね」
「マジか」
「どうする、うち友だち少ない」
「こんな事だから子供少なくなるんだよ。僕も友達いないよなあ。ふたりはハードル高いよ…下北沢行こう」

区役所から横浜の駅へ歩いた。スマホでふたりを撮った。アプリでちょっと加工した。僕のツイッターで拡散した。「ふたりは結婚します!」おめでとう、とか自重しろとか、全てがお祝いのメッセージに見える。

知り合いのシンガーソングライターに連絡した。

「ママからLINEだ」
「大丈夫か」
「ツイッターみたって」
「会いたいって」
「僕に…」
「うちにだよ」
「下北沢にきてもらおう」

友人のシンガーソングライターに会う。下北沢の彼の事務所。
「おめでとう」
「ありがとう、ハンコウ」
彼は彼女に照れてしゃべらない。結婚祝いにアナログ盤をくれた。僕らの初めての財産だ。彼女はサインをねだった。
「じゃあね」
用が済むと僕らはママと待ち合わせのカフェへ向かう。

オープンカフェのテラスにママはいた。
「あんた達また何考えてるの」
「僕達結婚します」
「うちの娘、まだ20才よ」
「20歳は結婚できるわママ」
「何もこんな親父と」
「親父とはたくさんやったじゃない、ママの仕事のためだよね。ママの遊ぶ金だよね。中学生の時さ電気一ヶ月とまったよね。こないだママの友達と中学生だって嘘ついてリゾート行かされたよね。わたし14だってさ、20才だよ、誰だってわかるよ」
「声がでかいよ、みっともないよ」

僕の頭の中で彼女のママの唄が鳴っている。
「ハンコウ下さい保証人のところ」
ママはだまってハンコとサインをした。
「さよならママ、」
「ありがとうございます」
「うちの幸せお祈りしてね」
僕は頭を下げた。ママは言った。
「忘れた、何もかも。あんたこの娘幸せにしなかったら首とぶよ」
オープンカフェに音楽はかかっていなかった。

彼女と僕は家に帰った。もう黒いスーツの男はいなかった。エントランスには誰もいない。窓のついたエレベーターを呼んだ。扉を閉じた。鍵を開け部屋に入る。風呂場の前でふたりは抱き合った。

この小説はハッピーエンドでおわる。ラジオをつけるとマントバーニの「ブルースカイ」が流れている。

「ねえこれからどうする」
「王将でビール」
「乾杯しようか」
「お金は」
「ない」
「うちがいるよ」
「よかった」

部屋を出て駅前の王将へいった。
彼女がビールと餃子とチャーハンをおごってくれた。
ふと目を閉じると小沢健二の「強い気持ち・強い愛」が頭の中流れる。まん中のナカグロはなんのためだったのだろう。95年の渋谷は不思議な空間だった。僕の働いていたレコードショップはもう建物すらない。街で知り合いにあった。2年ぶりの知り合いはやはり2年間分年をとっていた。小説を書いているという、僕もと答える。ギリシャ文明についてと言った。本当の事は本当に大切な人に言うものだ。

「幸せ?」
彼女が聞いた
幸せだよと僕は答える。子供の頃の歌謡曲の歌詞みたいだな。だけどこれが現実だ。
「かえで、幸せだよ」
彼女は僕にご褒美のキス。子守唄として「初恋サイダー」を歌ってくれている。

おやすみ、と僕はツイッターに打った。

これで僕の初めての小説は終わる。ハッピーエバーアフターがエンドロールで流れると良いと思う。

「あの人に最初にあった時は最悪だった。今でも悪い人だなあと思う。変態だし、結婚したのにお父さんて呼ばされてる。でももう一度人生があってもたぶん一緒の事がおこる。たぶん同じ」

ハッピーエバーアフター

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